こんにちは、司法書士の廣澤です。
「お客様紹介料」「登記顧問料」「リベート」
今日は、司法書士のSNSでよく話題になっている、こういった怪しいお金についての話でも。
紹介料を払う、貰うのは当たり前?
商売をされている方にとっては、当然のようにやりとりがされている紹介料。
フリーランス界隈で有名な方も、ラジオでこんなことを言っていましたね。
「フリーランスで独立してすぐに軌道に乗せたいのなら、お客さんを紹介してもらった業者に紹介料を払ったり、営業が苦手なら営業代行に依頼(成果報酬型)すればいい」
それに、うちの事務所にくるチラシにもこんな事が書いてあります。
「相続時に物件を売りたい人を紹介してください!貰った手数料のうち、〇%を先生に支払います!」
このように、商慣習として、紹介料のやりとりやそのアドバイス、営業など、紹介料についての話がポンポンでてくるのが一般的だと思います。
これは商人の考え方からきているのでしょう。
「タダでは絶対に動かない。お金もくれないあなたに親切する価値はない。対価をもらって初めてWINWINだ!」
と、こういうわけです。
法律に違反しなければ、倫理は意識しなくても良いのが一般的な個人に対する規律ですから、紹介料の支払いなどについては、信用第一である大きな会社を除いては問題視されることが少ないでしょう。
しかし、それが法律専門職(司法書士と弁護士)になると話が少し違ってきます。
なぜでしょうか?
法律専門職は、紹介料を受け取っても支払ってもダメ
弁護士と司法書士は、お客様紹介料や類似の報酬を支払ったり受け取ったりすることが、法律で禁止されています。(弁護士法72条、弁護士職務基本規程13条、司法書士法23条、司法書士法施行規則26条、司法書士倫理13条)。
これらの法律の趣旨は、資格の信用を維持するためだと思います。
例えば、近所の弁護士(又は司法書士)に相続相談をしたら、知人の遺品整理会社や葬儀社を紹介された。
弁護士が好意で紹介してくれたのだと思っていたが、数十万円を遺品整理業者、葬儀社に支払ったお金の中から、陰で受けとっていたらしい。そんな中、弁護士がこう主張したら、あなたはどう思うでしょうか?
「商慣習ではOKとされているし、別に法律で禁止されていない。相続の窓口として業者とWINWINな関係を築いたのです。あなたが紹介してくれといったから紹介したが、お金を受け取るんじゃないか?と確認されたわけではないし、あなたも遺品整理業者、葬儀社の見積もりに納得のうえ契約したはずだ。そこから私が紹介料を受け取ることに責められる理由はない。」
いかがでしょうか。
そもそもその弁護士に頼まなければ、数十万円安く済んだわけですから「こんなことなら初めから自分で遺品整理業者を探せばよかった」「弁護士(又は司法書士)はずる賢いことばっかりやっている」「弁護士(又は司法書士)は信用しないほうがいい。」「弁護士(又は司法書士)は怖い」
最終的には、「弁護士(又は司法書士)資格」なんかいらない。となることは明らかですよね。
一般的な事業者がこういった主張をすれば、確かによく考えずに依頼した方が悪いね、で話は終わりですが、法律専門職はそうではなく、弁護士制度、司法書士制度の存在意義自体が揺らいでしまうというわけです。
よって、業界全体のためにこういった倫理が重視されているものと私は考えています。
なぜ、紹介料が話題にのぼるか?
最近だと、EAJ問題と行政書士など法律家をうたっているのに紹介料の授受をしているという話が話題になりました。
1.EAJ 問題
EAJとは、依頼1件ごとにシステム利用料を支払うことで、依頼を貰えるシステムです。EAJ登録司法書士の違反懲戒処分リスクの注意通達
簡単に言えば、「システム利用料」自体が受託に応じて支払われるものなのであれば、それは紹介料にあたる恐れがあるという内容の通達が出されています。
なんとなく大丈夫そうだと思って使ったシステムが、実は大丈夫じゃなかったという感じでしょうね。紹介料なのか?広告にすぎないのか?という明確な判断基準がないので、間違いやすいのかなぁと個人的には思っています。
ちなみに私は、紹介料か広告かを判断するときは、次のように考えています。
① 依頼が約束されていない紹介等に対する費用の支払いは広告(顧客を紹介はしてくれるものの、自分で営業して選ばれなければ受注できないシステム)
② 依頼が約束されている紹介に対する費用の支払いは紹介料(成果報酬型の営業代行会社の利用、1件ごとの紹介料)
よって、営業が苦手な先生などは、補助者を雇ってから、営業してもらったりしているのを見かけますね。
コストは雇用した時点で発生し、また、1件1件の依頼が約束されているわけではないので、成果報酬型の営業代行とは違うという考え方になるのでしょう。
しかし、歩合給にした場合は紹介料に該当するような気がしますね。
行政書士や税理士等は法律専門職ではないので、一般事業者と同じように紹介料の支払いや授受は禁止されていません。
よって、先の一般事業者のように商慣習どおりの経営をしている方が多くても何も問題ありません。
実際に、司法書士と弁護士がいない相見積もりサイトでは、「あなたがお客さんに提案した報酬の40%をいただきます!」と宣伝して、行政書士と税理士の登録を募集しているのを見かけます。最近の葬儀社とマンション坊主の関係みたいな感じですね。
では、なぜこれが問題になるかというと、行政書士は今「街の法律家」というキャッチフレーズを掲げて、業界の信用性向上を行っている真っ最中であるためです。
どうしても法律の専門家であるという認知を広めたいと頑張っているところなのに、法律専門職(弁護士と司法書士)が禁止されている紹介料の授受を堂々と行う者がいるのは、業界にとって困るわけです。
よって、そういった「法律家であるという認知を広めたい」行政書士と、「法律家なんて目指していない」という行政書士で争いがあるのです。
また、司法書士には行政書士の兼業者が多くいますから、自らの利益のために業界全体を壊しに行く勢力にも見えてしまうということで、話題になるわけです。
まとめ
紹介料の授受の話は、一般の方にとってどうでもいい話かというと、そうではありません。この記事でシンプルにお伝えしたいことは「法律事務のことは、必ず最初に司法書士か弁護士にご相談ください」という事です。
銀行マンや不動産屋さん、保険営業マンや行政書士などに、窓口として相続手続・遺言・成年後見・会社登記・不動産登記のご相談をなさるのは、現時点では損失が大きいかと思います。
では、長くなったので今日はこのへんで。