よこはまの司法書士日記

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押印義務と商業登記

こんにちは。司法書士の廣澤です。

 

相変わらず、ちょこちょこ実務の細かい規定に苦しめられておりますが、最近悩んだのは、商業登記の押印廃止についてですね。

 

法務省:申請書、各添付書面等の押印の要否について(商業・法人登記)

 

国としては商業登記を簡略化したいという建前があるため、押印義務を廃止する方針で法改正を行っていますが、現時点で会社法で必要な時は押印が必要だし、委任状にはオンライン申請したいなら代表者が電子署名(列挙されたもののみ)しなさいという扱いになっています。つまり、押印廃止についてはまだ中途半端な状態なのですね。

 

また、この法律どおりに依頼者さんに司法書士が書類をご案内しようとすると、ほとんど他人の私が作った書類に印鑑がなく登記が通ってしまうケースもあります。

これはこれで、会社登記というのは役員個々人の責任の大小、許認可の要件にも関する部分ですから、「私は役員辞めていませんor就任していません。」「同意していません。従業員に勝手に進められました。」と、後でトラブルにならないためにも、押印がないのは好ましくありません。

 

よって、今後も押印義務のない資料にも最低限、会社実印や個人認印はもらうことにしました。ただし、割印はところどころでやり方を変えています。定款であれば割印をもらう必要はないかなと思い、原本証明を先にいただいて、番号をふって対応しています。原始定款の割印(定款認証を代行する場合の委任状も同様)は必須なので別ですが…。

 

最近悩んだのは押印義務がある場合に契印がいるかどうかですが、これは必要です。

また、複数枚の株主総会議事録に全員分の割印や契印がいるかどうかですが、これは記名押印をしている複数名のうち1名でも良いそうです。ただ、根拠がどこにあるのかが不明なので、最低限会社実印での割印はもらうべきかと思います。事務所さんによっては全員分常にもらっているのではないでしょうか。

 

では、今日はこの辺で。

 

 
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登録免許税の免税措置

こんにちは。司法書士の廣澤です。

 

今日は令和4年度の税制改正による相続登記の登録免許税の免税措置についてでも。

 

ご存じのとおり、登記の際にかかる登録免許税という税金は、自分で納税額を計算して申請しろ(計算ミスしたら還付申請をしなさい)という扱いになっていますが、その免税措置を利用する場合にも、自分で根拠を引っ張ってくるようにという扱いになっています。

例えば、登記申請書に租税措置法第〇条〇項により非課税という記載をその他欄に記載して根拠をしめさなければならないという感じですね。

 

その実際の適用の場面で上記の免税措置がどんな時に適用になるのか、あらためてまとめてみました。 

 

・一次相続の土地の免税

例えば数次相続が発生している場合、登記はまず1次相続の登記、その後に2次相続の登記と順々に申請することになりますが、この1次相続の登記の土地についてのみ免税されます。

 

建物は免税されないのでややこしいですが、2次相続の際の相続人が承継せず、1次相続の後に売却をしていたというケース(一般承継人による登記)の場合でも免税となるとのこと。

 

課税標準たる不動産の価額が100万円未満の土地の免税

課税標準たる不動産の価額が100万円未満とは?

①持分移転の場合はその持分の価額

②マンションの場合も敷地権1筆ごとで判断

 つまり、同一申請書に非課税と課税対象土地を混在させてもOK

③表題部所有者の相続開始による所有権保存登記でも利用可

④非課税土地は近傍宅地を地籍に乗じた数の30%で判断

 

一申請ごとの土地の課税価格ではなく、不動産ごとの課税標準となる価格で判断するというわけです。こちらも建物は免税されませんのでややこしいですね。

 

上記の通り、課税ルール自体は簡単ですが、実際に毎回計算するとなると骨が折れます…。

 

(相続に係る所有権の移転登記等の免税)
第八十四条の二の三 個人が相続(相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成三十年四月一日から令和七年三月三十一日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。
 個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から令和七年三月三十一日までの間に、土地について所有権の保存の登記(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第二条第十号に規定する表題部所有者の相続人が受けるものに限る。)又は相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、これらの登記に係る登録免許税法第十条第一項の課税標準たる不動産の価額が百万円以下であるときは、これらの登記については、登録免許税を課さない。
 
 
では、今日はこの辺で。

会社登記の過料と休眠会社のみなし解散

こんにちは。司法書士の廣澤です。

 

現在、令和4年度の休眠会社の整理が行われているようです。 

 

法務省:令和4年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について

 

令和4年12月31日までに12年間にわたり登記が行われていない株式会社などの法人は、職権で解散登記をされます。

 

どういうことかというと、解散登記をされてから3年以内に会社継続の登記をしなければ、その法人を復活することはできなくなるため、法人の再利用が不可になるということです。

 

ちなみに、有限会社や合同会社などは役員の任期がそもそもないので、休眠会社かどうか登記簿からわからないからか、この規定は適用されていません。

 

 

 

 

勝手に会社を解散させられるというのは怖いですね。

法務局から休眠会社としての通知をうけて2か月以内に何もしなければ、会社が勝手に解散させられてしまいますので、速やかに事業を廃止していない旨の届出や、必要な登記を行いましょう。 

 

もし、すでに解散させられてしまった場合は、あらたに役員や機関を設置しなおしたうえで、会社継続の登記を行う事になります。 

 

 

以上、今日はこのへんで。

 

 

 

 

 

債務引受と登記原因証明情報

こんにちは。司法書士の廣澤です。

 

今日も実務の話について。いつもお世話になっているので、同業者向けの記事です。

 

免責的債務引受の登記原因証明情報は、銀行によっては契約書の原本を預けてくれないので、こちらで登記原因証明情報を作るよう指示されることがあります。 

普段作り慣れていない内容になると、条文から要件をひっぱりだして、同一のものを作らないといけないのが、なかなか手間ですよね。

 

免責的債務引受については、最近、法改正があったので、条文をならべて試行錯誤してみましたが、全員で契約した場合であれば、次の内容で通ると思います。(保証はできません)

 

(1)年月日、債務者●、債権者●及び引受人●は、本件不動産上の抵当権の被担保債権である【債権の情報】に基づく●の●に対する債務について、引受人●が免責的に引き受ける旨を内容とする【契約書の名前】契約を締結した。

(2)(1)の契約の際、●及び引受人●は、引受人●が引き受ける債務に抵当権を移すことについて書面で承諾をした。

(3)よって、年月日、本件抵当権の債務者は●に変更された。

 

ポイントは、次の追加条文ですね

 

 

(免責的債務引受による担保の移転)
第四百七十二条の四 債権者は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。ただし、引受人以外の者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
 前項の規定による担保権の移転は、あらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならない。
 前二項の規定は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の保証をした者があるときについて準用する。
 前項の場合において、同項において準用する第一項の承諾は、書面でしなければ、その効力を生じない。
 前項の承諾がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その承諾は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。

 

債権者は引受人に対する単独の意思表示で原則、担保を移す事ができるが、保証や物上保証の場合などは、書面で承諾が必要というものです。保証契約は書面でというルールを引っ張ってきているのだと思います。

 

免責的債務引受契約書に移転について記載がない場合は、金融機関側に盛り込むよう指摘した方がいいと思いますね。(原則は担保消滅なので)

 

登記自体は申請人が所有者なので、承諾していることは明らかなことからその証明はいらないという構造で問題ないと思います。

 

では、今日はこのへんで。

 

 

休眠担保抹消と供託

こんにちは。司法書士の廣澤です。

 

今日は休眠担保を消すときの供託について。

いつも、同業者ブログに助けられていますので、私も同業者向けに記事を残しておきます。

 

休眠担保の債権額が数百円であれば、供託利用特例を利用されるかと思いますが、初めての時に悩んだところをまとめ記載しておきます。

 

1.行方不明の証明は内容証明でないとダメか?

普通郵便を本人限定で配達証明付きで送ればOKで、むしろそっちのほうがいいそうです。

 

2.郵便の内容

同封する催告書の文言は登記に関係ないですが、もし、届いてしまったら債務承認になると思いますので、届いてしまったときは記載を無効扱いとして、転じて消滅時効を主張するというような文言をいれておいたほうが無難だと思います。

 

3.供託者は誰か?

ほとんどのケースで相続と同時に抹消していくという事になるかと思いますが、その場合は相続人の承継取得者による第三者弁済という形式で受理されます。

つまり、債務を全員が共有しているからといって、全員から委任を貰う必要も、全員で供託する必要もないということです。

 

4.登記原因日付はどうするか?

お金を支払った日です。

オンライン申請だと申請日と支払日(受理日)がずれるので供託金額が変わるのではないかと不安になりますが、供託制度上問題ないそうです。不安だったので法務局に確認しました。受理日がずれて構わないとは、委任状の提示は申請日に必着じゃなくてもいいということです。申請してから送るので問題ありませんでした。

 

5.利息の計算式や、損害金の計算式を供託書に書くか

書きません。

 

6.計算はどうするか

法務省ソフトでの計算で充分でした。

 

7.供託書の内容や委任状の文言をどうするか

登記と違って、しっかりと事前審査してくれます。

 

以上、参考になればうれしいです。

Z世代とタムパ

こんにちは。司法書士の廣澤です。

 

今日は業務とは関係ないことについて。

最近、タムパという言葉を聞く事が多くなりましたね。

タムパとは、タイムパフォーマンスの略で、とくにZ世代が使う言葉で、代表的な価値観のうちのひとつだそうです。

 

授業動画を2倍速で見たり、映画を早送りしたり、食事中に音で学習したりというのがその代表例ですが、思い返してみると、自分もついやってしまっていますから、全年齢に広がりつつある価値観なのかもしれませんね。

 

amazonプライムなどで映画を見るときは、2時間の映画を1時間以内に見終わっていると思いますし、研修や実務を学ぶときも要点だけ抑えてあとは実践でという学び方をすることが多いです。

 

これだけだとなんでもかんでも「効率化したい」と、一見、野暮な行動のようにも思えますが、一方で若者の間ではチルする、リトリートという言葉も聞きます。

 

これらの根底にあるのは「何もしない時間というのは贅沢だ」といった価値観だそうです。これはすごくわかりますね。自然公園などを無心で散歩するときなど、幸せを感じます。

 

相反するような価値観ですが、要するに、趣味や仕事に効率を求める一方で、主観で重要なイベント、行動には時間をかけるといった価値観が広がりつつあるということでしょうか。

 

これって、難しいですね。

 

価値のある体験だと主観で感じてもらえなければ、提供した情報を勝手に省略されてしまう方向に進んでいるってことですから、クリエイティブな仕事をしている人は大変だなぁと思います。私が頑張って半日かけて書いた記事なども、題名とまとめしか読まれないかもしれないということですから、他人事ではないですね笑

 

タムパについて個人的には、効率化していいものとそうでないものがあるように感じます。難しい本、人間関係、仕事の経験など、一定のものごとは時間をかけて学んだり、関係を築くなどする必要があると思うのです。

 

分かりやすい話で、ラジオで理論物理学者の方が、物理学者とそうでない人との違いは物理学的な「直観」にあるとおっしゃっていました。毎日難しい計算をずーっとおこなっている物理学者は、直観で「このプロジェクトは機能しないな」と最初からわかるのだそうです。

 

この話はなんにでも当てはまると思ってまして、例えば古典を読む時間がないからといって、その概要を漫画やyoutubeで知っても、それは血肉になっておらず、実際に読んだのとは別物の体験となるのではないでしょうか。自分で言っていて、なぜか自分の耳が痛いですが笑

 

以上、こんな感じで、日ごろ思ったことなども書いていけたらいいですね。

長くなったので今日はこのへんで。

 

 

法定相続証明情報と法定相続人情報

こんにちは。司法書士の廣澤です。

 

今日は、長期相続登記など未了土地解消作業の法定相続人情報について少し。

 

法務省:所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)

 

現在、所有者不明土地の解消作業が行政内部で行われているところ、来月から、あらたに法定相続人情報の取得制度が設けられるとのことです。

 

細かいところは全部省略して簡単にまとめると、次のようになります。

 

1.長期間相続登記をしていない方には「長期間相続登記などがされていないことの通知(お知らせ)」が届きます。

 

2.相続登記をするにも戸籍収集量が膨大なため、登記申請することが難しいという状況を想定して、「法定相続人情報」という、登記官が作成した書面を法務局に交付請求することが可能になります。

 

 つまり、登記申請時において、本来自分で戸籍を集めて作るべき法定相続情報証明(一覧図)と同様の効力のある証明書を、国の都合で勝手に作ってくれているという事です。なお、この証明書は無料で取得する事ができます。

 

3.よって、通知がきた人は、戸籍集めの労力もなく、相続人間で遺産分割協議を行うなどするだけで登記申請が可能になります。

 

 

結果的に、相続登記を長期的に放置していた人は得をすることになったということですから、なんだかなぁと思う部分ですね。(トラブルになるリスクがずっとあったわけなので、運がよかっただけなのかもしれませんが…)

 

ユリウス・カエサルの巨額の借金の話に通ずるものを感じます。

今後は相続登記自体が義務化されますから、このような国の制度設計の穴によって歯がゆい思いをされる方が減るといいですね。

 

では、今日はこのへんで。