よこはまの司法書士日記

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終末期の医療について

こんにちは。司法書士の廣澤です。 

 

後見業務を行う中で、気になったテーマ「終末期の医療」について。

問題の所在は、こんなところです。

 

①本人は亡くなる前の数週間の間、意思表示が全くできないことがある 

②後見業務の場合、本人の医療同意、身元引受け、保証をする親族がいないケースがある

③実務上は、本人の終末期の医療について、その周囲をとりまくソーシャルワーカー、後見人、医者、看護師、介護士など、いろいろな専門家の意見を調整しながら、本人の医療方針について慎重に合意して進める

④しかし、専門家らはそれぞれ、親族から死後に訴訟を起こされる可能性がある

⑤よって、本人の治療は、本人の意思を最重要視はするものの、消極的なものにならざるを得ない

 

本人の意思の確認ができない場合

本人の意思確認ができない場合には、次のような手順により、医療・ケアチームの中で慎重な判断を行う必要がある。

①  家族等が本人の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。

②  家族等が本人の意思を推定できない場合には、本人にとって何が最善であるかについて、本人に代わる者として家族等と十分に話し合い、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて、このプロセスを繰り返し行う。

③  家族等がいない場合及び家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合には、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。

④  このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、文書にまとめておくものとする。

 

複数の専門家からなる話し合いの場の設置

上記の場合において、方針の決定に際し、

・医療・ケアチームの中で心身の状態等により医療・ケアの内容の決定が困難な場合 ・本人と医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容についての合意が得られない場合

・家族等の中で意見がまとまらない場合や、医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容についての合意が得られない場合等については、複数の専門家からなる話し合いの場を別途設置し、医療・ケアチーム以外の者を加えて、方針等についての検討及び助言を行うことが必要である。

人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン厚生労働省

 

 

 

■ 訴訟の例

愛知県の老人ホームに1370万円支払い命令…誤嚥の81歳窒息死に地裁「危険性予見できた」 : 読売新聞 

 

あくまで事例なので判例は読んでいませんが、

もし、本人が口から食べ物を食べることを最後まで望んでいた(明確な根拠資料は残していなかった)としたら、どうでしょうか?

 

この事例は別として、 

のどに詰まるのが予見できたから、ゼリーか点滴で延々と生命維持するのが好ましかったのでしょうか?

動いたらケガをすることが予見できるときは、ベッドに縛り付けておくのが正しいのでしょうか?

 

生前に本人に確認のうえ、その希望通りにしたことが原因で、後になってこのような訴訟トラブルになったのだとしたら、今後、専門家らが本人の意思は最低限の尊重のみとするような、一律の対応になることも考えられますよね。

となると、本人の意思が全く尊重されない極端なケースも、もちろん出てくるでしょう。 

 

 

■ 終末期医療について

基本的に、終末期医療についての法律上の学説は混迷しており、どう対応するのが正しいかなどは、ガイドラインはありますが、ハッキリしているわけではありません。(この病気は〇〇で対応するといったように、明確にきまっていないというこです)

 

◇いろいろな議論 (平成18年~)

安楽死行為と尊厳死行為

・死期の切迫と終末期

・苦痛の緩和と尊厳の維持

・病者の自己決定権、推定的意思

・本人の決定・家族の決定・医療的決定

・死の結果に対する法的責任の追及と医療決定のガイドラインの策定

◇終末期医療の基本的な視点 

・経済的観点からの治療の差し控えは肯定すべきではない

・病者の最善の利益という判断から、生命の短縮を招く医療の差し控えは、許されることもある 

・病者の最善の利益は、医療的パターナリズムによってではなく、本人の主観的判断において決定される 

参考:上智大学法学研究科 町野朔(法律学) 終末期医療と刑法

 

■ 対策について 

尊厳死宣言公正証書 (リビング・ウィル)」が対策としては一般的です。

 

例えば、回復の見込みのない終末期に苦痛を緩和するケアだけを行い、延命措置は行わずに自然な状態で死を迎えることを希望する場合や、逆に治療はできるだけ続けてほしいといった希望がある場合は、「意思表示をしたことの真正が担保される書面で、明確に医療方針について書き残しておく」ことが重要です。 

 

すでに一部の介護施設などでは、入居の際に本人の治療に関する意思表示を書面化して保存されているようですが、日本で尊厳死は認められていませんので、医師がその認印が押印されただけの資料を認めてくれるかどうかはわかりません。公正証書であれば、法的効力はないのですが、医師がその内容に従って治療方針を決めてくれる場合がほとんど(9割以上)のようです。

 

公正証書を作るのは面倒だとお考えだとしても、エンディングノートリビングウィルノートくらいは、元気なうちに最低限、残しておくべきだと思います。

(例)

Q3. 「尊厳死宣言公正証書」について、説明してください。 | 日本公証人連合会

リビング・ウイルとは | 公益財団法人 日本尊厳死協会

 

 

■まとめ

地域で、声掛けが増えることが理想ですね。 

 

現状、遺言が必須な状況なのに残っていないことが多いですし、エンディングノートすらないと周囲が勝手にいろいろ進めてしまいます。元気なうちにある程度対策を行っていないと、現状は、人生の最後に、後悔する結果になることがあります。実際、後見業務を行っている中で、ご本人が「こんなはずじゃなかった。こんな風になるとは。」とおっしゃっていたことがありますから、同じような方はかなりいるはずです。

 

地域ケアプラザなどでケアマネさんに相談しているような高齢者の方であれば問題にならないかもしれませんが、病院・施設嫌いな方や、行政を頼らないタイプの方もいますよね。そういった方に対し、「遺言は書いたほうがいい」「尊厳死宣言をしたほうがいいんじゃないか」など、気遣いの輪が広がるといいですね。

 

長くなったので今日はこの辺で。

 

 

 

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