こんにちは。司法書士の廣澤です。
日々業務を行っていると、司法書士に仕事を一度依頼したことがない方から、「大変失礼ですが、司法書士さんの報酬に違いがあるのは、具体的になぜですか?」と聞かれることがありました。
確かに、クライアントの皆さんにとっては、素朴な疑問ではないでしょうか。そこで、いろいろと考えてみたので、記事にしてみようと思います。
司法書士の報酬基準
まずは、報酬決定根拠のあらましから。
現在、司法書士報酬の設定金額は自由化されていますが、もともと司法書士は、平成15年1月1日までは、以下の基準表をもとにして報酬請求をし、仕事をしていました。税理士等の隣接士業も同様に昔は基準表がありましたよね。
現在の司法書士の報酬
実際のところ、報酬は自由に決めて良いことになっているので、なぜその金額なのか?というのは個別の事務所や法人の判断により異なりますが、だいたいの報酬目安については、
日本司法書士連合会が数年前のアンケートを公開しています。当事務所では、こちらの表を参考にして、平均よりも少し安い程度の報酬を設定しています。
報酬による違い
上記の通り、司法書士報酬は自由化していますから、あとは事務所ごとの判断で設定するということになります。
よって、ここからはあくまで、私の推測や一方的な考えを羅列します。
1.前提として、旧報酬基準の額に引っ張られて、現在の報酬価格帯が作られている
いまだに旧基準表をもとに報酬決定している事務所も多くあるため、この基準表の価格に引っ張られて現在の報酬価格帯が作られているものと思われます。
例えば、報酬を決定して見積りした後で、もともとの旧報酬基準を知っている事業者の方や、何度も司法書士に依頼をしたことがあるというプロの方などから、
「高すぎる」「安すぎる」といった声をもらい、調整した結果が現在の価格帯といったところでしょうか。
資格者への異常な責任の重さに対して、信じられない低額な金額で不動産売買の登記が日々行われていますが、旧報酬基準に引っ張られているのでしょうね。
2.入口の提案だけ安い
言わずもがなですね。相続手続きについて、インターネットで報酬相場チェックを行ったことがありますが、
激安事務所があるように見えますが、実際のところ、激安事務所もフタを開けてみればオプションで普通の料金になるというのがわかりました。
相続手続きの相場・費用感まとめ:オアシス司法書士・行政書士事務所
問い合わせが増えないとそもそも仕事につながらないので、そういった仕事の獲得方法なのだと思います。開業したての事務所などは、仕事がないので異常に安いというケースもあります。
3.低価格にする事によって差別化している
登記業務は結果が同じとなり、業務過程に価値を感じてもらうことが難しく、差別化が難しいです。なので、低価格であるという差別化が最も効率的です。
安かろう悪かろうだとは思いますが、登記の事故は何十年も先に判明することですし、過程がどうだったかの判断は難しいので、対応さえよければ依頼した後の納得感も高いものかもしれません。
ただし、零細事務所がこれをやると最悪、業務過多により事故を起こして撤退という状況が考えられますし、老齢年金をもらいながら市場に参加してくる公務員上がりの資格者なども見受けられ、
いずれその価格帯が当然という規模になれば持続的ではなく、市場破壊に思えるので、個人的には結果的に三方よしにはならない事などから、否定的に考えています。
しかし、クライアントさんからしたら、安ければ、そんなことはどうでもいいですよね。事故があったら、その時に責任追及すればいいだけだと考える方がほとんどでしょう。高速バスやトラックの居眠り事故などもよくニュースになっていますよね。
普段から、専門家が介入する価値を言語化して説明を丁寧に行い、また手続き過程をより良いものにしようと頑張っていますが、その価値はご依頼前にはわかりませんから、低価格の見積りは強敵です。
不動産の取引件数も登記件数も減り、円安物価高のなかで低価格で提案を続けるのはいずれ限界がくるでしょうから、そのうち、別事業者を刈り取る目的で、
うちで不動産を買えば「登記費用は無料」、会社設立をうちですれば「登記費用は無料」というような一般事業者や大規模法人が増えてきそうですね。独占禁止法で国が動くのも、レアケースな気がします。
4.事務所や個人のブランド化や依頼過多
「あの人に頼みたい」という人が多く、高額なケースや、依頼が増えすぎて費用が高いというケースが考えられますね。
「士業は人」とおっしゃる方がいますが、ほんとにそうだと思います。
ご紹介先の先生のクレームや、逆に意気投合して依頼してよかったというお話を聞くなど、士業の仕事は人と人なのだなぁと日々感じています。
とりあえず、あの先生に相談、という士業になれればいいですね。
5.オフィスが一等地にある、人を多く雇用している
銀行に相続手続きを頼むと100万円以上するというのは、ご存じでしょうか。
これと同じで、広告をたくさんうっていて、一等地にオフィスを構え、信用を買い取っている分、提案する費用も高額になります。
また、どんどんグループを拡大していくような司法書士法人などは、その分利益がないと回らないので、営業部隊がいて、その人件費分、費用を高く設定していたりするみたいです。
いずれにせよ、自身で調べてたどり着いたのではなくて、企業側の宣伝努力で依頼にいたったのであれば、その分の広告費用や人件費が、報酬に上乗せされるということでしょうかね。
以上、長くなったので今日はこの辺で。
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